B級コラム編集部

身近な関心ごとから社会問題まで。興味のあることにツラツラとひねくれた意見を書いています。

落語的視座からみた銀魂考

<編集手記>
趣味で集めた綺麗な言葉をただただ紹介します。

君待つと 吾が恋をれば 吾が屋戸の すだれ動かす秋の風吹く
万葉集

あなたの事を愛しく思って待っていた秋の夜、簾が動く音がしたので見てみれば、風が揺らす音でした。
こんな感じの現代語訳で概ねあっていると思います。
直接語らないのにその心情の揺らぎが伝わってくる感じが、とても大好きな一首です。

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<時事ネタまくら>
談志さんの落語のまくらに倣って、話の初めに時事ネタはさんで見る事にしました。
気になったニュース記事と簡単な考察を載せて行きたいと思います。

1.アダルトビデオ会社がFC2を提訴
まあそりゃそうですよね。ただでさえ苦しい業界で無料配信が横行したら、経営なんて立ち行かないですもん。
ただ、アダルト動画に限らずアニメやドラマが無料で違法アップロードされてしまうのは、ある程度しょうがない気もします。
いっそ映像版JASRACみたいなの作って、運営側から製作者に一定のお金が入るようなシステム作った方が、相互の利益になる気がします。

2.細川元首相、都知事選出馬に最終調整
恥ずかしい話、昨日まで細川氏って書いてあったのを、細田氏って勘違いして、民主党の細田さんが出るんだって思ってました(笑)
元首相が都知事選出たら先行きが分からない。
しかも小泉さんと手を組むかもしれないとなると、ダークホースになりそうです。
生活の党代表の小沢さんも支持したら面白そう(笑)
三人の共通点は脱原発。でもそもそも、都知事選に原発問題って正味関係ないですよね。。。


3.飲酒運転:74歳逮捕「無免許で50年運転」
そりゃ無免許もいけないですし、飲酒運転が許されないことは分かるのですが、一方で50年無免許でも運転してたなら、そこらのペーパードライバーより確実に運転はうまい気がします。
実感値としてですが、今の若い人で免許を身分証程度に考えてる人って多いと思うんです。
だったらいっそ、免許なくせばいいのになんて思ったり思わなかったり、、、
個人的には、ゴールド免許持ってるペーパードライバーより、50年無免許のおっちゃんの方が、運転上手い気がします。

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<薄口コラム>

「大工調べ」に出てくる粗忽物の与太郎に、「松曳き」に出てくる殿と三太夫。
落語の世界には普段はだらしがないけれど、粋な心や人情を大切にする江戸の人間が多く登場します。
落語家の立川談志さんは、こうした古典落語に登場する人たちの根底に流れる生きざまを取って、「落語とは業の肯定である」と表しました。

普段はだらしなく見えるけれど、義理や人情を通す。
これって銀魂の登場人物たちの根底にある考え方だと思うんです。
そして、僕たちが惹きつけられるのも、普段はダメダメな登場人物たちが、いざというときに別人のように活躍するあの姿。
実は僕たちが魅力だと思っているのは、武士の世界観ではなく、落語的な世界観なんじゃないかって思います。

銀魂の世界に出てくるキャラクターの最大の特徴は、日常の生活では誰もが自堕落な一面を持っているというところです。
日常においては欲望のままに行動し、決して頑張らない(笑)
ちょうど、業すなわち自分の弱い部分を肯定したような世界感が描かれます。

サンキュータツオさんという落語の評論家が、落語が長く受け入れられてきた最大のポイントは、他のあらゆる芸術が人間の弱い部分の否定で成り立っているのに対し、落語だけは人間の弱さの肯定で成り立っている点にあると言っていました。
僕たちが銀魂に惹かれる理由も、自堕落な登場人物たちに共感しているからという面があるような気がします。
普段は自分の弱さに負けてしまうことがあるけれど、ここぞというときには踏んばらなければいけない。
そんな登場人物に自分たちを重ねているからこそ、読んでいる内に引き込まれてしまうのではないかと思うんです。

近年のジャンプの作品の多くは、「努力・友情・勝利」というジャンプの精神に、何か一つエッセンスを加えた構成になっています。

たとえば、生徒が教師を殺すという邪道のエッセンスを加えた「暗殺教室」。
敵方の正義・戦う理由というエッセンスを加えた「ブリーチ」。

いろんな手法で「努力・友情・勝利」にアレンジを加えたマンガがありますが、落語のエッセンスを加えたものなんて今まで見たことがない。
だからこそ、あんなに味のある作品に見えるような気がします。

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<オススメ本>
第6回 川上量生「ルールを変える思考法」
昨年10月に発売されたドワンゴの会長川上量生さんの本です。
ニコニコ動画というサービスを生み出した人の頭の中、そのルーツが書かれていてたいへん面白い一冊です。
以前、岡田斗司夫さんが、川上さんはSF小説を読んでいるからこそ、ニコニコ動画のようなコンテンツを生み出すことが出来たのだと評価していました。
曰く、「技術者視点では、この技術によりどんなものが生み出せるかしか考えないが、SFを読んでいる人は新しい技術を生み出したらどんな世界が待っているかを考えることができる」のだそう。
川上さんはこの本の中で一貫して「技術の発展でどんな世界が待っているか」ということにスポットを当てています。
他の経営者の本と比べて一番おもしろかったのはこの点です。
自分にとって違う視点を取り入れられるという点で、本当におすすめの一冊です。

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<駅前スナップ>




去年、20年に一度の宮の建て替えが行われた伊勢神宮
その式遷年宮に伴って駅前が一新されました。
写真は去年の3月のもの。
駅前から外宮にかけての道には食事処や土産屋が並び、ゆっくりと楽しめる街並みです。
赤福かき氷や生シラス丼ぶりなど、結構レアな食べ物を提供しているお店もあり、式遷年宮が終わっても観光スポットとして結構おすすめの場所だと思います。

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<あとがき日記>
昨日茶道をしている知り合いと話していて、お茶の楽しみ方を教わりました。
庭の手入れや茶室の装飾、使用する茶器の一つ一つにこだわり、相手をもてなすのだそう。
そうした気配りをくみ取る為には、当然もてなされる側も深い教養を有していないといけません。
両者の知識や教養があって初めて本当の意味で楽しめるのが茶道なんだと思いました。
っと同時に、他の芸術でも同じことが言えるのではないかと思ったり思わなかったり、、、
普段僕たちが音楽を聴いたり映画を見たりしている中にも、実はこちら側の教養が足りないがゆえに見逃している作者からのメッセージみたいなものがあるような気がします。
そういったものを楽しめる程度の教養は身に付けておきたいと思った瞬間でした。